「心のトレーニング」とも言われ、現在数々の有名企業や医療の現場でも取り入れられているMindfulness。
ストレス解消等の効果の他にも、心が整理される効果があります。その過程の中で、私達の脳の様々な機能が変化していることが分かっています。
今回はMindfulnessによって変化する様々な脳の部位の中から、「前頭葉」についてご紹介します。
前頭葉
脳は大きく分けて、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分かれており、部位によって異なる機能を持っています。その中でも、最も進化している部位が前頭葉です。
前頭葉は、脳の一番前にある部分です。子供から大人への成長の過程で発達します。成長につれて幼稚さがなくなり、思慮深くなっていくのは前頭葉が発達してくるからです。思考力だけでなく、物事に対する集中力や実行力、対人コミュニケーションなど様々な役割を受け持っています。その為、前頭葉は、脳全体の司令塔と言われています。また、前頭前野は人間など進化した動物ほど発達しており、大脳皮質における前頭前野の割合は、
人間で30%
チンパンジーで17%
イヌで7%
ネコで4%
と言われています。
ヒトが人であり、他の動物と違うのは、この大きな前頭前野を持っている為ともいわれており、ヒト特有の高度な思考や感情などはすべて前頭葉の働きであるといわれています。
(公益財団法人)東京都医学総合研究所 生理心 理学研究部門
渡邉 正孝氏 (独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
担当編集委員 入來 篤史氏 原稿より抜粋
前頭葉は委縮する
注意力や集中力を司る前頭葉は、加齢に伴いだんだん血流量が低下することが解っています。一般的には、40歳を過ぎた辺りから委縮していく傾向があると言われています。このようなことから、ある程度の年齢になると、物忘れやうっかりミスが多くなるというわけです。もちろん、加齢だけが原因ではありません。
大きな原因として挙げられるのは、仕事や日常生活で感じる心理的不安やストレスです。ストレスが前頭葉の血流量を一層低下させる要因になることもあります。人間がストレスによってダメージを受けるのは心ではなく脳なのです。悪いストレスは脳に変調をきたす原因になります。悪化すれば、脳の成長を止める力を持つのです。
更に、最近のIT環境がストレス過多現象に追い打ちをかけています。このように現代的な社会生活の中の多くの要因が、前頭葉にとって様々な影響を与え、脳の機能が低下につながっているのです。
前頭葉が萎縮すると…
加齢やストレスで前頭葉が萎縮すると私達にはどの様な影響が出てしまうのでしょうか。下記の症状は、その一部です。
・我慢が出来なくなる
・感情のままに行動する
・キレやすくなる
・コミュニケーションが下手になる
・人の話を理解できなくなる
つまり、理性が保てなくなり人間らしくいられなくなるという事です。
Mindfulnessは前頭葉の委縮予防に繋がる
Mindfulness をしている時、私達の脳は思考や情報処理が停止している状態になると言われています。
つまり「脳が休憩できている状態」という事です。
「ストレス社会」と言われる現代社会で生きる私達の脳は、日々ストレスによって萎縮してしまっている傾向があります。Mindfulnessは、そんな前頭葉の委縮の大きな原因である、ストレスの軽減に効果的なのです。
ある実験の研究結果からも、
「Mindfulnessは脳にアプローチしストレスの軽減に繋がる」
ということがわかっています。アメリカのカーネギーメロン大学、デイビット・クレスウェル教授の実験結果です。
彼は、35人の無職者を集めました。
彼らは皆、職探しに大きなストレスを感じている人達です。
デイビット・クレスウェル教授は彼らを、Mindfulnessを3日間「行うグループ」と「行わないグループ」に分けました。
研究の結果、Mindfulnessを行なったグループは前頭葉の働きが大きく向上し、行わなかったグループは前頭葉の働きが落ちてしまっていた事が分かりました。たった3日間でも、Mindfulnessを行う事によって私達の脳に、良い効果が現れることがこの研究結果でわかります。
この事から、近年ではうつ病の治療法としてもMindfulnessが取り入れられています。
【 終わりに 】
科学的にも効果が実証されているMindfulness。
「心のリラックス」へ繋がるのは”脳へのアプローチ”があるからだったのです。
やらなきゃ損!と言っても過言ではありませんよね。
生きていく中で、ストレスを完全に無くすことは出来ません。
そのストレスと向き合い、うまく対処する方法を身につけましょう。
Mindfulnessで、脳の活動を意識的に切り替える事ができれば前頭葉の血流改善にも良い効果が見込めます。
是非、日常に取り入れてより充実感の溢れる人生を!
※脳内科医 「脳の学校」代表 加藤俊徳 「脳を『接待』する!上手な脳内リズムの整え方」より一部抜粋。
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