目次
はじめに
皆様は「軸」というものを意識したことはありますか?
スポーツの世界では良く耳にする言葉ですが、日常生活で軸を意識している方は少ないかもしれません。
しかし、人はどんな動作をするときも身体に軸を作って動いています。
軸を作ることで動きのパワー・スピードが増し、また動きが安定するので日常の動きも楽になります。
今回はその「軸」そして軸を意識した「4つのスタンス」についてご紹介します。
軸とは何か
運動における軸の重要性
軸は身体を支える芯になる物です。真っ直ぐ仁王立ちをしている時には身体の中央が軸になりますが、運動をする際は常に身体が動いているので、同時に軸も動きます。
態勢を動かした際にそれに合わせて軸も動いていないと、身体の力を効率よく発揮できず、本来のポテンシャルを出すことが出来ません。
効率よく最大の力を発揮するためにも、常に軸を意識する必要があります。
軸のポイント
軸は固定された1つの線ではなく、ある5つのポイントのうち3ポイント以上が揃った部分が軸となります。
その5つのポイントとは以下の5つです。
1.首の付け根
2.みぞおち
3.股関節
4.膝
5.足底
仁王立ちの状態ではこの5つが揃った状態ですが、運動中の不安定な状態ではこの内の3ポイント以上で軸を作り、動きを安定させます。
そして、この運動軸を作った状態に腹筋を使って腹部に圧力をかけておくと軸が安定し続けます。
効率の良い運動を行うには、常に体軸と腹圧を意識することが重要です。
4スタンス理論とは
4スタンス理論概要
先に述べた「軸」は、実は人によってA1・A2・B1・B2の4つのタイプが存在します。足裏を十字に区切ってAタイプはつま先重心、Bタイプは踵重心。そして1タイプは内側重心、2タイプは外側重心と4つのグループに分けることが出来るのです。更に肩と股関節の使い方によってパラレルタイプとクロスタイプの違いもあります。この4つのタイプの違いによって、例えば腹筋や腕立て伏せの動き一つにしても意識するポイントが変わってきます。これが【4スタンス理論】です。
なぜ4スタンス理論が必要なのか
概要でも述べたように、タイプの違いによって使う軸や意識するポイントが変わってきます。皆様は「あの人の動きを真似したいのに何度やっても上達しない」なんて経験はありませんか?練習量に関してはまた別の問題として、原因はタイプの違いにあるのかもしれません。繰り返しになりますが、運動には軸がとても重要です。しかし4スタンスのタイプが違う人同士はそもそも軸の使い方から違います。もちろん何度も練習すれば出来るようになるかもしれませんが、自分と違うスタンスの動きを習得することはとても難しく、効率が悪いのです。
ご自身の動きを上達させたり効率よく身体を動かしたりするには、自分のスタンスを知り、それに合った動きを意識することが大切なのです。
4スタンス選別
ここでは概要で紹介した4スタンスのポイントを詳細にご紹介します。
Aタイプ
Aタイプはつま先側、つまり身体の前側で軸を作るタイプです。このタイプは主にみぞおちと膝で軸を作っています。その為、体制を動かす際はみぞおちと膝を意識して、それ以外のもう一つのポイントと繋いで軸を作ります。しゃがむ時はお尻をつき出すように、腹筋や背筋などの筋トレの際は膝を抑えてもらうと安定します。野球のフライキャッチやサッカーのトラップの動作は、ボールとみぞおちが直線上にあると動作が安定します。
Bタイプ
Bタイプはかかと側、つまり身体の後ろ側で軸を作るタイプです。このタイプは主に首の付け根と骨盤、もしくは骨盤と足底で軸を作ります。
その為、常に股関節の上に頭があるような意識でいると動きが安定します。しゃがむ時は膝を曲げて、腹筋や背筋は骨盤を安定させるため膝ではなく足首を固定します。フライのキャッチやサッカーのトラップは、ボールと首の付け根が直線で重なるように意識しましょう。
1タイプ(内側重心) 2タイプ(外側重心)
軸の取り方は内側か外側かでも違いがあります。1の内側タイプは人差し指と中指の辺りでバランスをとり、2の外側タイプは中指と薬指の辺りでバランスをとります。
パラレルタイプ クロスタイプ
前、後ろ、内、外以外にも、パラレルタイプとクロスタイプの違いもあります。
パラレルタイプ
パラレルタイプは「右肩と右股関節」といった様に左右同じ側同士の肩と股関節が連動して動きます。例えば綱引きのように何かを引く時や逆に押す時などは、左右の足を平衡にする方が力を発揮できます。A2、B1タイプがパラレルに分類されます。
クロスタイプ
クロスタイプは「右肩と左股関節」といった様に左右対角同士の肩と股関節が連動して動きます。パラレルタイプと同様に例えると、左右の足は前後にずらして身体が捻じれる様に意識すると力が出ます。A1、B2タイプがクロスタイプです。
4スタンス各種特徴(キックボクシング編)
以上の項目から分類される4つのスタンスの特徴を、キックボクシングの動き(レギュラースタンス)でまとめると以下のようになります。
A1タイプ(つま先、内側重心、クロス)
膝とみぞおちを中心に体重軸をとり、左右対角の肩と骨盤で回転軸を作る。歩く、走る際は膝とみぞおちが同時に前に出るイメージ。
構え:まず息を吸いながら腕全体を下後方から大きく開き、上前方から閉じてガードポジションに構え、最後に息を吐く。次に拳を人先指と中指を中心に握り、みぞおち・左膝・左足底で体重軸を作る
打撃:パンチ・キックを打つ際は、左肩から右股関節が伸縮する様に回転軸を意識する。ジャブは左の足底と膝を軸とし、キックは身体が飛び上がるような体重移動を意識する。
A2タイプ(つま先、外側重心、パラレル)
膝とみぞおちの裏側(背骨の第12胸椎)で体重軸をとり、左右対称の肩と骨盤で回転軸を作る。歩く、走る際は膝とみぞおちの裏が同時に前に出るイメージ。
構え:息を吸いながら腕全体を下前方から大きく開き、上後方から閉じてガードポジションに構え、最後に息を吐く。次に拳を人先指と中指を中心に握り、みぞおち・左膝・左足底で体重軸を作る
打撃:パンチ・キックを打つ際は左肩と左股関節を伸長する様に回転軸を意識する。ジャブは左の足底と膝裏を軸とし、その上にみぞおちの裏を乗せ込んで打つ。蹴りはA1同様飛び上がるイメージで打つ。
B1タイプ(かかと、内側重心、パラレル)
足底・股関節・首付け根で体重軸を作り、右対称の肩と骨盤で回転軸を作る。歩く、走る動作は後ろ足で地面を蹴りだして進む。Aタイプの様に膝を上げるのではなく、踵を股関節に引き付けるイメージ。
構え:息を吸いながら、脇の下を意識しつつ肩を下後方から開き、上前方から閉じてガードポジションに構え、最後に息を吐く。次に拳を人先指と中指を中心に握り、右足底・股関節・首付け根で体重軸を作る。
打撃:パンチ・キックは右肩と右股関節を収縮させる様に回転軸を意識する。ジャブは右足底・股関節裏・首付け根裏を軸にして打ち、蹴りは身体が下に沈むように打つ。
B2タイプ(かかと、外側重心、クロス)
足底・股関節・首付け根で体重軸を作り、左右対角の肩と骨盤で回転軸を作る。歩く、走る動作は後ろ足で長く地面を踏み込んで、鼠径部が前に移動するイメージで前に進む。
構え:息を吸いながら、脇の下を意識しつつ肩を下前方から開き、上後方から閉じてガードポジションに構え、最後に息を吐く。次に拳を人先指と中指を中心に握り、右足の鼠径部の上に首付け根の前側を乗せる様に体重軸を作る。
打撃:パンチ・キックは右肩と左股関節が収縮する様に回転軸を意識する。ジャブは右足底・右股関節前・首付け根を揃えて軸にして打ち、蹴りは身体が下に沈むように打つ。
まとめ
この様に、動き自体は同じでもタイプによって身体の使い方や意識するポイントが全く異なります。
自分の身体に合った動きを理解することで日々の生活の動きが楽になりますし、運動の上達も早くなって効率も上がります。
しかしここで注意していただきたいのが、4スタンス理論はあくまで目安ということです。
A1タイプだとしてもこの動きはBタイプの方がやり易いといった場合もありますし、アスリートや長くスポーツをされている方は、日々の練習によって本来苦手な動きで習得し、既に慣れてしまっている可能性もあります。
ですが「運動は軸が大切」である事には変わりはないので、理論にとらわれ過ぎずに色々なスタンスの動きを試してみて、自分に合った動きを探してみると、新しい発見があってとても楽しいと思いますよ。
参考文献
廣戸聡一(2008)4スタンス理論
廣戸聡一(2008)【格闘技版】4スタンス理論
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